手首式血圧計を購入し血圧を測定すると、やや高くショックを受けた副院長。外来では厚手の服は脱いでもらうことが多いですが、上から測るとどうなるの?今回は普段疑問に思っていることを実際試してみたので紹介します。まずは測定法をおさらいしましょう。
お医者さんの測定と自動血圧計の測定では測定法が違う!
コロトコフ法
お医者さんが聴診器をあてて血圧を測る方法をコロトコフ法と言います。カフで上腕部を閉塞し、続いてカフを減圧し血流が流れ出すとき、血管から「トントン」と心拍に同期した音が聴こえ始めます。これがコロトコフ音(血管音)です。さらに減圧を続けると音が聴こえなくなります。聴こえ始めが「収縮期血圧(最高血圧)」、消えたときが「拡張期血圧(最低血圧)」です。
オシロメトリック法
現在の多くの自動血圧計が採用しているのはオシロメトリック法です。カフで圧迫して動脈を閉塞し、続いてカフを減圧するときに血管壁に生じる振動(脈波)を用いて血圧を測定します。カフを減圧していくと、ある時点で脈波が急激に大きくなり、その後急速に小さくなり、ある時点で変化しなくなります。脈波が急激に大きくなったときの圧力が「収縮期血圧」、変化がなくなるときの圧力が「拡張期血圧」です。
というように測定法が違います。大きな差はないと考えてください。
腕(手首式は手首)の位置による影響
血圧を測定するときにはカフの位置を心臓の高さにすることが大事です。上腕式血圧計は自然と心臓の高さとなりますが、手首式は肘を机について手首を上げるので血圧値がばらつきやすくなります。心臓より腕が高いと血圧値は低く、心臓より腕が低いと血圧値は高くなります。10cmで7mmHgの違いが出るようです。最近の血圧計には正しい高さを表示してくれるタイプもあり、安定した測定ができるようになっています。
厚手の服のうえからカフを巻いても大丈夫?
夏はよいですが、冬は問題になりますね。特に北海道は冬にいっぱい着込みます。診察室で何枚めくりあげても素肌に到達しない方がたくさんいます。また、一般的に気温が高いと血圧は下がり、気温が低いと血圧は上がります。冬に薄着になって1-2分安静にしていたら寒くて血圧があがってしまうかもしれません。ということで試してみましょう。①はセーターを2重折にして正しい高さで測定しています。②はセーターをもどして普通に測定しています。③は一応もう一度2重セーターで測定しています。むむっ、セーターの上からでは高くなるようです。ユニクロのフリース2重折で妻も試してみましたがやはりフリース2重折では高くなりました。コロトコフ法+厚手ニットで試した報告がありましたが、厚手ニットでは高くなったとのことでした。コロトコフ法、オシロメトリック法いずれにしても血圧値が高くなるということは、厚手の服の部分で圧力が吸収されてしまうため、カフを強くしめつけないといけないということだと考えます。よってシャツくらいは良いですが、厚手のセーターや厚手のニットの上からでは正確な値がでないので気をつけましょう。手首式では手首だけ露出できればよいので、楽ちんですね。
腕まくりで血圧はどうなる?
上と同様に薄い服では問題になりませんが、セーターやニットをまくり上げた場合は影響が出るでしょうか?原理としては動脈が圧迫して血流が弱くなれば血圧は下がるはずです。ではやってみましょう。先程のボーダーのセーターをかなりきつめにまくり上げて測定しましたが、あまり変わりありません。妻にも試しましたが、変わりありません。セーターのまくり上げくらいでは現実的には影響ないのかもしれません。もっともっと強く(血流がとまるくらい)すると結果は違うかもしれません。やはり、腕を締め付けるようなまくり上げはやめましょう。また、まくり上げによる痛みがあると血圧は上がるかもしれません。
血圧は何回はかればいいの?
高血圧ガイドラインでは1機会に「原則2回」測定し、その平均をその機会の血圧値として用いると記載されています。今回のOMRONの手首式血圧計では朝の最初の3回の平均を朝血圧、夜の最後の3回の平均を夜血圧として記録してくれますので、それぞれ1回目と3回目でどうなったかを紹介します。3回の朝血圧が測定できた25日分、3回の夜血圧が測定できた24日分の結果は下の通りです。
朝収縮期血圧1 | 朝収縮期血圧3 | 朝拡張期血圧1 | 朝拡張期血圧3 | 朝脈拍1 | 朝脈拍3 |
133 | 129 | 93 | 88 | 78 | 77 |
夜収縮期血圧1 | 夜収縮期血圧3 | 夜拡張期血圧1 | 夜拡張期血圧3 | 夜脈拍1 | 夜脈拍3 |
129 | 125 | 87 | 85 | 72 | 71 |
自分としては1-2分の安静後に測定したつもりです。過去のデータなので定かではありませが・・・。表を見ると1回目より3回目の方が低めになっています。朝血圧(1日3回分の平均)の25日平均は131mmHg、夜血圧(1日3回分の平均)の24日平均は126mmHgなので、1機会1回測定では高くなってしまいますね。測定している間に安静が続くためと思われますので、3-5分安静にすると安定するかもしれません。やはり、2-3回測定して平均するのがよいと思われます。最近の血圧計では平均を計算してくれる機能があるものが多いはずですのでうまく利用しましょう。また、OMRONconnectアプリでは朝血圧、夜血圧、心拍数をグラフにしてくれますので、自分で書く必要もありません。そのまま医師にみせてもOKですよ。
まとめ
前回と今回で自動血圧計による血圧測定についてつぶやきました。上腕式は測定方法が一定となりやすいですが、本体も大きく、巻きにくい。手首式は測定方法がばらつきやすい(測定値がばらつく)ですが、持ち運びしやすい、手首だけ露出できれば測定できる。というような特徴があります。大事なことは正しい時間に、正しい測定法で、続けるということです。続けるという意味では手首式の方に歩があると思います。また、診察の前には厚手の服はぬげるように準備してもらえるとありがたいです。自宅の血圧計の測定値に不安があれば診察のときに持ってきてもらえるとアドバイスできると思います。
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